「養育費は、離婚が決まってから話し合えばいい」。そう思っていませんか。実は、離婚前の段階こそ、養育費を決めるのにいちばん適した時期です。離婚が成立したあとは相手と連絡が取りにくくなり、話し合いの場をつくること自体が難しくなるからです。
- いくらもらえるのかの疑問
- 話し合いに応じてもらえない状況
- 何を決めればよいかの迷い
- 途中で止まったときの心配
この記事では、離婚前に決めておきたい4つのこと、金額の相場の調べ方、支払いが止まったときの対応までをまとめました。養育費は親のためのお金ではなく、子どもが育つためのお金です。
ロトちゃんお金の話を切り出すと、もめそうで怖いな…。



決めずに別れるほうが、あとで大変になります。お子さんのための話だと考えてみてくださいね。
養育費は子どもの権利


養育費とは、子どもが自立するまでに必要な生活費や教育費を、父母それぞれの収入に応じて負担するお金です。離婚して一緒に暮らさなくなっても、親であることは変わりません。だからこそ、支払う側の気持ちひとつで決まるものではなく、法律上の義務として扱われます。まずは、この前提を押さえておきましょう。
親が負う扶養の義務
親には、子どもを扶養する義務があります。しかもこの義務は、自分の生活を切り詰めてでも、子どもに同じ水準の生活をさせるという強いものです。「余裕がないから払えない」は、原則として通りません。
つまり養育費は、お願いして恵んでもらうお金ではないのです。子どもが当然に受け取るべきものだと考えてください。
婚姻費用との違い
混同されやすい2つですが、対象になる人と時期が違います。
- 婚姻費用…離婚するまでの、配偶者と子どもの生活費
- 養育費…離婚したあとの、子どもにかかる費用
別居中であれば、離婚が成立するまでは婚姻費用を請求できます。くわしくはこちらをご覧ください。


受け取れている家庭は少数
現実には、養育費を継続して受け取れている家庭は多くありません。取り決め自体をしないまま離婚するケースや、取り決めても途中で支払いが止まるケースが目立ちます。
だからこそ、離婚を考えている段階から話し合い、書面に残しておくことが大切になります。あとから追いかけるより、先に形にしておくほうが何倍も楽です。
離婚前に決めておく4つのこと


養育費の話し合いでは、金額だけを決めて終わりにしがち。けれど実際にもめるのは、金額よりも「いつまで」「どうやって」の部分です。支払いが止まったときにすぐ動けるかどうかも、ここでの決め方で変わります。離婚届を出してからでは、相手と連絡を取ること自体が難しくなります。届を出す前に、次の4つをセットで決めておきましょう。どれも難しい言葉は要りません。
毎月の金額
子どもの人数と年齢、父母それぞれの収入をもとに決めます。裁判所が公開している算定表が目安になるので、まずはそこで相場を確認してください。
支払いが続く期間
「子どもが20歳になるまで」とするのが一般的ですが、進学を考えているなら「22歳に達した後の3月まで」のように決めることもできます。
ここをあいまいにすると、進学の時期にもめます。大学へ進む可能性があるなら、その前提で決めておくほうが安全です。
支払い方法の取り決め
細かいようですが、次の4点まで決めておくと、あとで困りません。
- 振込先の口座
- 毎月の振込日
- 振込手数料をどちらが負担するか
- 進学や入院など、まとまったお金が必要になったときの扱い
書面に残す方法
口約束だけでは、相手の気が変わったときに何もできません。おすすめは公正証書です。公証役場で作る公的な書面で、「支払わなければ強制執行を受けても異議はない」という文言を入れておけば、裁判をしなくても給与を差し押さえられます。



公正証書を作る費用を補助してくれる自治体も増えています。お住まいの市区町村の窓口で聞いてみてください。
養育費の相場と決め方


いくらが妥当なのか。これは誰もが最初に悩むところです。結論から言うと、裁判所が公開している算定表が出発点になります。話し合いでまとまらず調停になった場合も、この表をもとに話が進むからです。相場を知らないまま話し合うと、低い金額で合意してしまうことがあります。先に目安を確認しておきましょう。
算定表の見方
算定表は全部で19枚ありますが、養育費で使うのは表1から表9までです。表10以降は婚姻費用用なので間違えないようにしてください。
子どもの人数と年齢で使う表が決まり、縦軸で支払う側の年収、横軸で受け取る側の年収を探します。交わったマスが毎月の目安です。
金額を左右する条件
目安を決めるのは、次の3つです。
- 父母それぞれの年収(会社員か自営業かで見る列が変わります)
- 子どもの人数
- 子どもの年齢(0〜14歳と15歳以上で区分)
なお算定表は、公立学校に通うことが前提になっています。私立に通う場合や、医療費が高額にかかる場合は、別に話し合って上乗せを求めることが可能です。
あとから変更できるか
一度決めた金額も、事情が大きく変われば見直せます。相手が転職して収入が増えた、子どもが進学した、こちらが病気で働けなくなった。こうした場合は、増額や減額を求める話し合いができます。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に養育費の増額(減額)調停を申し立てる方法があります。
払われなくなったときの対応


取り決めたのに振り込まれなくなった。これは珍しいことではありません。ただ、公正証書や調停で決めた養育費には強い効力があり、相手が応じないときは裁判所を通じて回収できます。あきらめて泣き寝入りする必要はありません。使える手段を順番に見ていきましょう。自治体が用意している支援もあります。
まずは履行勧告
調停や審判で決めた場合は、家庭裁判所に申し出ると、相手に支払うよう促してもらえます。費用はかかりません。
強制力はありませんが、裁判所から連絡が届くことで支払いが再開する例もあります。
強制執行という手段
それでも支払われない場合は、相手の給与や預貯金を差し押さえられます。養育費は子どもの生活に直結するため、ほかの借金より手厚く扱われ、給与の2分の1まで差し押さえられるのが原則です。
さらに、一度手続きをすれば、将来の分もまとめて差し押さえられる場合があります。
自治体と国の支援
近年は、養育費を受け取りやすくするための支援を行う自治体が増えています。
- 養育費に関する専門の相談支援
- 公正証書を作る費用の補助
- 養育費保証契約の費用の補助
内容は自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。国が委託している相談窓口もあります。
▶ 養育費・親子交流相談支援センター(こども家庭庁委託事業)
▶ ひとり親家庭等関係(こども家庭庁)
養育費のよくある質問


窓口で実際によく聞かれる疑問をまとめました。相手が再婚したらどうなるのか、取り決めをしないまま離婚してしまった場合はどうすればよいのか。不安に思うところは、人によって違うはずです。状況によって答えが変わるものもあるので、当てはまりそうなところから読んでみてください。判断に迷うときは、専門の相談窓口に確認するのが確実です。
取り決めずに離婚した場合
離婚後でも請求できます。子どもの権利なので、時間がたっていてもあきらめる必要はありません。
ただし受け取れるのは、原則として請求したときから先の分です。過去にさかのぼって全額を取り戻すのは難しいため、気づいた時点で早く動くほど有利になります。
相手が再婚したとき
相手が再婚しても、養育費を支払う義務は消えません。親子関係は離婚や再婚では変わらないからです。
ただし、再婚相手との間に子どもが生まれた場合は、扶養する人数が増えるため、減額が認められることがあります。
こちらが再婚したとき
再婚しただけなら、養育費は原則としてそのまま続きます。
注意が必要なのは、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合です。扶養する義務が再婚相手に移るため、減額や免除が認められることがあります。
相手に収入がないとき
収入がなければ、支払いを求めるのは難しくなります。ただ、働けるのに働いていないと判断される場合は、統計上の平均収入をもとに金額が決められることもあるのです。
進学費用の扱い
入学金や授業料は、毎月の養育費とは別に話し合うのが一般的です。取り決めのときに「進学時は別途協議する」と入れておくと、話し合いの土台になります。
未払い分の時効
公正証書や調停で取り決めた分には時効があり、放置すると請求できなくなる部分が出てきます。未払いが続いているなら、早めに相談してください。
子どもの未来を守るためのまとめ


養育費は、子どもが育つために当然に受け取るべきお金です。離婚前に話し合って書面に残しておけば、支払いが止まったときにも動けます。金額の目安は裁判所の算定表で調べられますし、困ったときの相談窓口も用意されています。遠慮する理由はひとつもありません。最後に、押さえておきたい点をまとめます。
- 毎月の金額は算定表で確認
- いつまで払うかの期限
- 振込先・振込日・手数料の負担
- 公正証書にして形に残す
- 自治体の補助制度の確認
すべてを一度に整える必要はありません。まずは算定表で相場を調べ、お住まいの市区町村の窓口に「養育費の取り決めについて相談したい」と伝えるところから始めてみてください。
離婚前から使える支援は、こちらの記事にまとめています。





窓口にいらっしゃる方の中には、「もらえなくても仕方ない」とあきらめている方が少なくありません。でも、養育費はお子さんの権利です。言い出しにくい気持ちはよく分かりますが、遠慮する必要はまったくありません。
話し合いが難しいときほど、第三者が入ると前に進みます。どうかひとりで抱え込まないでくださいね。
※この記事は一般的な制度の紹介です。金額や手続きは個別の事情によって変わり、制度が改正されることもあります。実際のご利用にあたっては、お住まいの市区町村の窓口や家庭裁判所、弁護士にご確認ください。





