「離婚したほうがいいのかもしれない。でも、この先ひとりで子どもを育てていけるだろうか」。そんな思いを抱えたまま、誰にも話せずにいませんか。子どもにつらい思いはさせたくないし、後悔する決断もしたくない。迷ってしまうのは、それだけ真剣に考えている証拠です。
- 離婚後の生活費への不安
- 相談先が分からない心細さ
- 別居中のお金のやりくり
- 子どもの学校や住まいの心配
- 決めきれない自分へのもどかしさ
実は、離婚が成立していない今の段階でも、使える支援や相談できる窓口はあります。ただ、制度は自分から申し出ないと利用できないため、知らないまま我慢している方も少なくありません。
ロトちゃん離婚前だと、まだ何の支援も受けられないのかな…。



いいえ、離婚する前から使える制度があるんです。迷っている段階でも、相談して大丈夫ですよ。
この記事では、離婚前でも相談できる窓口、別居中から使えるお金の支援、今のうちにそろえておきたい準備をまとめました。決断を急ぐ必要はないはずです。まずは「今の自分に何が使えるのか」を知るところから、一緒に始めてみましょう。
離婚前に使える支援の全体像


「離婚の話を切り出す前に、生活のめどを立てておきたい」。そう考える方はとても多いです。結論からお伝えすると、離婚が成立していない今の段階でも、使える支援や相談できる窓口はあります。ひとり親向けの制度は離婚後を対象にしたものが中心ですが、相談・生活費・住まいに関わる支援は婚姻中から利用できるからです。たとえば別居中の生活費を配偶者に請求する制度や、子どもの学用品費を助ける制度は、離婚前でも対象になります。まずは全体像をつかむところから始めましょう。


離婚前から使える支援
まだ婚姻中でも利用できる支援には、次のようなものがあります。
- 市区町村や都道府県の相談窓口
- 別居中の生活費である婚姻費用の請求
- 学用品費や給食費を助ける就学援助
- 親子で生活しながら自立を準備する母子生活支援施設
- DV被害がある場合の一時保護と支援措置
共通しているのは、どれも自分から申し出ないと始まらないという点。役所から「あなたはこの制度が使えます」と教えに来てくれることはありません。
離婚後から使える支援
一方、離婚が成立してから対象になる支援もあります。代表的なものは次のとおり。
- 毎月の生活を支える児童扶養手当
- 医療費の負担を軽くするひとり親家庭等医療費助成
- 資格取得を後押しする自立支援教育訓練給付金
- 養成機関で学ぶ間の生活費を支える高等職業訓練促進給付金
- 家賃の助成や住宅支援資金の貸付
離婚後の支援については、こちらの記事でくわしくまとめています。
▶ 【離婚を考えているママへ】離婚したらどんな支援が受けられる?住まいと仕事のサポートを中心にまとめました
相談から利用までの流れ
実際に支援へたどり着くまでの道すじは、次の4段階です。
「ひとり親の相談をしたい」と伝えれば、担当につないでもらえます。離婚を決めていなくてもかまいません。
子どもの年齢、住まい、収入、いちばん困っていることを話します。整理できていなくても大丈夫です。
今の段階で使えるもの、離婚後に使えるものを分けて説明してもらえます。必要な書類もここで確認しておきましょう。
制度によっては申請した月から対象になります。書類がそろっていなくても、まず窓口で受付だけ済ませておくと安心。
離婚前でも相談できる4つの窓口


迷っている段階なら、まず相談から始めるのが近道です。制度は申請しなければ使えず、どれが自分に当てはまるかは状況によって変わるからです。たとえば収入や子どもの年齢、住まいの状況ひとつで、使える制度は入れ替わります。ここでは、離婚が成立していなくても利用できる4つの窓口を紹介します。どこも無料で、相談したからといって離婚を勧められることはありません。


市区町村のひとり親相談窓口
いちばん身近な窓口です。市役所や区役所の子育て支援課・福祉課には、母子・父子自立支援員という相談員が配置されています。生活・お金・仕事・子どものことをまとめて相談でき、必要な制度につないでもらえます。
名前に「ひとり親」とついているため、まだ離婚していない自分は対象外だと思われがちです。実際には離婚を決めていない段階の相談こそ、この窓口が想定している相談。「離婚したほうがいいのか分からない」という内容でも問題ありません。



予約が必要な自治体もあります。まずは代表番号に電話して「ひとり親の相談をしたいのですが」と伝えてみてください。それだけで担当につないでもらえます。
都道府県の女性相談支援センター
各都道府県に設置されている、女性の困りごと全般を扱う相談機関です。以前は「婦人相談所」という名称でした。夫婦関係の悩み、暴力、生活の不安など、幅広い内容を受け止めてくれます。
市区町村にも女性相談支援員が置かれていることがあります。「役所の子育て窓口では話しにくい」という場合の選択肢として覚えておくと安心です。
法テラスの無料法律相談
「弁護士に相談したいけれど費用が心配」という方のための公的な制度です。収入などの条件を満たせば、同じ問題について無料で法律相談を受けられます(原則3回まで)。弁護士費用を立て替えてもらい、あとから分割で返す制度もあります。
- 親権や監護をどう決めるか
- 財産分与の考え方
- 養育費の相場と決め方
- 別居するときの注意点
こうした法律の疑問は、早い段階で専門家に確認しておくほど選択肢が広がります。
DVや身の危険があるときの窓口
配偶者からの暴力がある場合は、配偶者暴力相談支援センターに相談してください。ここでいう暴力には、殴る蹴るだけでなく、暴言・行動の監視・生活費を渡さないといった行為も含まれます。
安全の確保が何より優先されます。緊急のときは、ためらわず110番してください。
別居中から使えるお金の支援


別居を始めると、手元のお金が急に足りなくなることがあります。ただし、離婚が成立するまで何ももらえないわけではありません。夫婦には離婚するまで互いの生活を支え合う義務があり、その考え方にもとづく制度が用意されているからです。ここでは別居中から使えるお金の支援を4つ紹介します。手続きの時期によって受け取れる額が変わるものもあるので、早めの確認が大切です。
生活費を請求できる婚姻費用
別居中の生活費を配偶者に請求できる制度です。これを婚姻費用(こんいんひよう)といいます。離婚が成立していなくても、収入の多い側が少ない側の生活を支える義務があるためです。弁護士や家庭裁判所では「婚費(こんぴ)」と略して呼ばれることもあります。
金額は双方の収入と子どもの人数に応じた目安表(算定表)をもとに決まります。話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることが可能です。
▶ 算定表は裁判所の公式サイトで公開されています。養育費・婚姻費用算定表(裁判所)
婚姻費用は「表10〜表19」、養育費は「表1〜表9」です。ご自身と相手の年収、子どもの人数と年齢が分かれば、おおよその金額を確認できます。





気をつけたいのが請求のタイミング。婚姻費用は請求した時点からの分が対象になるのが原則です。「そのうち話し合おう」と先延ばしにすると、その間の生活費は戻ってきません。別居したら早めに動きましょう。
相場の調べ方や、払ってもらえないときの対応は、こちらでくわしく解説しています。


児童手当の受給者変更
見落とされやすいのがこの手続きです。子どもと一緒に暮らしているのに、児童手当は配偶者の口座に振り込まれたまま、というケースが少なくありません。
別居して子どもを養育している場合、受給者を自分に変更できることがあります。市区町村の窓口で、別居の状況を伝えて相談してみてください。
学用品費を助ける就学援助
小中学校にかかるお金を援助してもらえる制度です。離婚前でも、世帯の収入状況によって対象になります。窓口は学校または教育委員会です。
- 学用品費
- 給食費
- 修学旅行費
- 校外活動費
対象になる費目や所得の基準は自治体ごとに異なります。学校からの案内を待たずに、こちらから聞いてみるほうが確実です。
健康保険と年金の切り替え
配偶者の扶養に入っている場合、別居や離婚にともなって切り替えが必要になります。保険証が手元にないと医療機関で困るため、早めの確認が欠かせません。
国民年金の保険料は、収入が少ないときに免除や猶予を受けられる仕組みがあります。未納のまま放置すると将来の年金額に響くので、払えないときこそ窓口へ。
離婚前にそろえる書類と準備


離婚の話し合いは、資料がそろっているかどうかで進み方が変わります。財産分与や養育費の取り決めには、双方の収入や財産がわかる書類が必要になるからです。別居してからでは手元に残らない資料もあり、あとから集めようとすると手間が増えます。ここでは、今のうちに確認しておきたい3つの準備を紹介します。どれも特別な手続きは要りません。
収入と財産がわかる資料
まず押さえたいのが、家計の全体像がわかる書類です。写真に撮っておくだけでも役に立ちます。
- 源泉徴収票や給与明細(自分と配偶者の分)
- 預貯金の通帳
- 生命保険や学資保険の証券
- 住宅ローンの残高がわかるもの
- 家賃や光熱費など毎月の支出メモ
年金分割のための情報通知書
婚姻期間中の厚生年金の記録を、離婚時に分け合える制度があります。手続きには年金事務所で取り寄せる「年金分割のための情報通知書」が必要で、この書類は離婚前でも請求可能。
注意したいのは期限です。年金分割の請求には離婚から2年という期限があります。忘れやすい手続きなので、早い段階で調べておきましょう。
養育費と面会交流の取り決め
養育費は親の都合で決めるものではなく、子どもの権利です。口約束だけで済ませると、支払いが止まったときに動きづらくなります。公正証書などの形に残しておくことが大切です。
面会交流についても、離婚前に方向性を話し合っておくと、子どもの生活が安定しやすくなります。くわしくは次の記事をご覧ください。
▶ 養育費は子どもの大切な権利
▶ 共同養育計画 離婚・別居を考えているお父さん、お母さんへ
住まいと安全を確保する方法


離婚を考えるときに最も重いのが住まいの問題です。家を出たいけれど行き先がない、という理由で動けない方は少なくありません。ただ、住まいについては離婚前から使える受け皿があります。あわせて、居場所を知られたくない場合の仕組みも用意されているのです。ここでは住まいと安全に関わる3つの制度を紹介します。いずれも窓口は市区町村や福祉事務所です。
離婚前でも入れる母子生活支援施設
子どもと一緒に暮らしながら自立の準備ができる施設です。離婚が成立していなくても利用できます。住まいの確保と生活の立て直しを同時に進められる点が特徴です。
相談先は福祉事務所です。空き状況や利用条件は地域によって差があるため、まずは問い合わせてみましょう。
住所を知られない支援措置
別居したあと、住民票をたどって居場所を知られてしまうことがあります。これを防ぐのが住民基本台帳事務における支援措置です。DVやストーカー被害などがある場合に、住民票や戸籍の附票を相手が取得できないようにできます。
申し出先は市区町村の窓口です。警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談が前提になることが多いため、あわせて確認しておくと手続きがスムーズに進みます。
公営住宅の優先入居
公営住宅では、ひとり親世帯やDV被害者を優先的に扱う枠を設けている自治体があります。募集の時期や条件は地域ごとに異なるので、住宅担当の窓口で確認してください。
家賃の助成や貸付を使う方法もあります。住まいの支援は種類が多いため、こちらの記事もあわせてどうぞ。
▶ 家賃の負担を軽く|ひとり親の「住宅支援資金」をわかりやすく
離婚前の支援によくある質問


窓口に相談する前に、多くの方が同じところでつまずきます。「まだ何も決めていないのに相談していいのか」「相談したことが相手に伝わらないか」といった不安です。ここでは実際によく寄せられる6つの疑問にお答えします。結論を先に言えば、迷っている段階でも相談は歓迎されますし、内容が配偶者に伝わることもありません。ひとつずつ確認していきましょう。
離婚を決めていない段階での相談
まったく問題ありません。むしろ、決める前に制度を知っておくほうが選択肢は広がります。相談の結果「離婚しない」という結論になっても、窓口が困ることはありません。
配偶者に相談内容が伝わる心配
相談内容には守秘義務があり、窓口から配偶者へ連絡がいくことはありません。安心して話してください。住所を知られたくない事情がある場合は、その旨も最初に伝えておきましょう。
専業主婦が受けられる支援
収入がない方こそ、相談する意味があります。別居中の生活費にあたる婚姻費用は、収入が少ない側が請求できる制度です。仕事探しや資格取得の支援も、離婚後の制度として用意されています。
別居前でも使える制度の有無
同居したままでも、相談窓口・就学援助・法テラスの法律相談は利用可能。一方、婚姻費用や母子生活支援施設のように、別居が前提になるものもあります。
相談にかかる費用
市区町村の窓口も女性相談支援センターも無料です。弁護士への相談は本来有料ですが、法テラスの制度を使えば条件つきで無料になります。
相談時に持っていくもの
手ぶらでも大丈夫。ただ、次のものがあると話が具体的に進みます。
- 子どもの人数と年齢のメモ
- 自分の収入がわかるもの
- 今の住まいの状況
- いちばん困っていること
離婚前にできることのまとめ


離婚前は「まだ何も使えない時期」ではありません。相談できる窓口があり、別居中から使えるお金の支援もあり、住まいの受け皿も用意されています。知っているかどうかで、その後の生活の立ち上がり方は大きく変わるはずです。大切なのは、完璧に準備してから動くことではありません。今の状況を誰かに話し、使えるものから順に手をつけていくこと。それだけで、先の見通しは少しずつ立っていきます。最後に、今日からできることを整理しておきましょう。
- 市区町村のひとり親相談窓口へ電話
- 別居中なら婚姻費用の請求を検討
- 児童手当の受給者を確認
- 収入と財産がわかる書類を撮影
- 年金分割のための情報通知書を請求
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。順番に迷ったら、いちばん上から始めてください。窓口の相談員は、まだ何も決まっていない状態の話を毎日聞いています。
迷っている時間は無駄ではありません。それでも、ひとりで抱え込む必要はないはずです。まずはお住まいの市区町村に「ひとり親の相談をしたい」と電話をかけるところから。その一本が、次の暮らしの入り口になります。



窓口でお話をうかがっていると、「こんなことで相談していいのかな」とためらってから来られる方がとても多いです。でも、迷っている段階のお話こそ、私たちがいちばん聞きたいことなんです。
制度の名前が分からなくても大丈夫。今の状況を話していただければ、使えるものを一緒に探します。どうか、ひとりで抱え込まないでくださいね。
※この記事は一般的な制度の紹介です。制度の内容や条件は自治体によって異なり、変更されることもあります。ご利用にあたっては、必ずお住まいの市区町村の窓口や専門家にご確認ください。個別の法律問題については弁護士や法テラスにご相談ください。





